コロナ禍での金価格の動向
昔から「危機は金購入の好機」という相場の格言があります。
コロナ禍により多くの投資家が資金の逃避先を求める中、今年の金相場は年初来で大幅に上昇し2012年以来の高値を付けています(下記は国内金価格の推移)。
一段の上昇を見込む声も多い。格言はこれまでのところ、新型コロナウイルス危機でも通用するように見えています。
もっとも個人も政府も収入の落ち込みを目の当たりにしており、伝統的に金の買い手である新興国のインドや中国の消費者は購入を減らし、各国の中央銀行も金購入を削減している状況にあると言えます。こうした需要がなければ、金の一段の上昇を維持するのは難しいと言えるのではないでしょうか。
安全目的の金の重要は一定程度ある
金は経済混乱、資産や通貨の価値減少の可能性を懸念する投資家から安全目的の買いを集めているといえます。
2011年に価格が1オンス=2,000ドル目前の過去最高値を付けたのと似た強気相場を予想する投資家もいるといえます。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは、年末までに3,000ドルを付けると予想しています。
しかし、過去の値動きが何らかの参考になるとすれば、金が本格的にさらに上昇するには需要増加が続くことが必要といえますが、リーマンショックの際のように中国に十分なキャッシュがあるかと言えば答えは[No]といえます。
モルガン・スタンレーの首席クロスアセットストラテジスト、アンドルー・シーツ氏によると、インフレが金を押し上げるとか、政情不安などで金が上がるといったことをよく聞くが、値動きはそれほど簡単ではないと指摘しています。
市場の流れに乗るほうがいいのか
過去に金のめざましい強気相場(ブル)は2回あったといえます。
まず最初の急騰は1970年ごろに世界で金本位制が崩れ、金の個人保有規制が緩和された局面です。
コーク大学のファーガル・オコナー氏によると、たまっていた金需要の拡大が解き放たれた。政情不安や経済混乱、投機ブームを背景に、35ドルだった金は1980年には1オンス800ドル近辺に上昇しました。
これが天井を付けると、20年にわたる相場低迷期を迎えることになります。各国中央銀行が大量売却に動いたのがきっかけだったといえます。1999年には一時、250ドルまで下落しています。
そこで潮目が変わりました。市場構造が変わったともいえます。欧州の中央銀行は金売却の協調で合意し相場は安定しました。
中国も個人の金保有規制を緩和し、市場での金購入は急増しました。金を原資産とする上場投資信託(ETF|上場投資信託)も登場、個人が金に投資するのを容易になりました。
ワールド・ゴールド・カウンシルによると、金の年間需要は2003年から約11年にかけて、約2,600トンから同4,700トン超に拡大しました。
この相場上昇は、高値を嫌った需要減退で終わる。その後は昨年まで、金価格低迷が続いた。しかし、各中銀の利下げが相次ぐにつれて、債券利回りの低下とともに、利息を生まないはずの金投資の魅力が再び増すことになりました。
金にしがみつく?
2008年に金融危機が訪れたのは、直近の金相場上昇局面のさなかだった。つまり、金融危機は値上がりをさらにあおった状況となりました。
金融危機の初期には金融資産が幅広く急激に値下がりしたため、投資家は換金可能なものは何でも売らざるを得なくなり、金相場が急落する場面がありました。新型コロナの世界的大流行が市場のパニックをもたらした今回も、同様のことは起きました。
しかし2008年も2020年の今年も、各中銀が大量の資金供給に動き、債券利回りは低下しています。
インフレが起きて他の資産や通貨の価値が目減りするリスクを避けるため、投資家は金に戻った状況にあると言えます。
バンク・オブ・アメリカのアナリストらは、大半の主要国でゼロ金利ないしマイナス金利が極めて長期化すると指摘しています。
一部の投資家は、中銀の資産買い入れが紙幣の印刷と同じ作用をもたらし、ドルの価値を減じて、金の魅力が再び増すことになるとみています。
バンク・オブ・アメリカによれば、米連邦準備理事会(FRB)は「金を印刷することはできない」と見解を示しています。
2008年以降、金市場では中銀だけでなく個人からの需要が高まりました。
中銀は売り手から買い手に転じた。さらに中国のような新興国からの需要も高まっていました。
中国の金消費量は2003年はわずか200トン強だったが、2011年には1,450トンに拡大しました。
今や、ロシアの中銀などは経済浮揚に追われ、金購入を減らしている状況にあります。
中国とインドの金市場の成長も約10年前に頭打ちになり、今回、新型コロナによる封鎖措置で事実上、崩壊しました。何百万人もの失業者が出ただけでなく、ドルが上昇すれば人民元建てやルピー建ての金価格はさらに割高になるからです。
インド金地金宝飾協会のスレンドラ・メフタ事務局長は「国民の可処分所得が減る一方、金価格は上がっている」と述べ、同国で金の販売はさらに減るか、買い手はまったくなくなるとの見通しを示しました。
消費者が金を手放す可能性もある。タイでは今月、街中で現金を得るための換金売りの長い行列ができた。HSBCのアナリストによると、今年の売却で市場に供給される金は過去最高水準に近づくと見込まれています。
インドの宝飾業界団体の会長によると、同国の今年の金消費量は350トンにまで下がり、昨年の約700トンから大幅に落ち込む可能性があるとしています。
リフィニティブ・GFMSのコンサルタント、サムソン・リー氏によると、中国の需要も昨年の950トンから640トンに減る可能性があるとみています。
金融商品で実物買い
金価格が上昇するには、需要の落ち込みが他で穴埋めされる必要がある。これまでのところ、ETF(上場投資信託)でそれが起きています。
金を原資産とする金融商品であるETFの金投資は、年初から400トン以上増えて3,300トンを超え、評価額では約1,800億ドル(約19兆円)と最高規模になりました。
資産運用会社スプロットのピーター・グロスコプフ最高経営責任者(CEO)は、金でのヘッジ需要がずぬけたものになると予言しています。
「不安な投資家は十分すぎるぐらいいる」と話しています。
ただ、金価格がさらに急騰することに懐疑的なアナリストも多いといえます。
年末に3,000ドルの強気予想をするバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチですら、来年の平均価格は2,063ドルに下がり、それから数年は2,000ドル以下で推移するとの見方を示しており、金価格の上昇はコロナ禍の収束とともに下落していくということが市場関係者のコンセンサスと言えるのではないでしょうか。
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