資金循環統計・日本銀行(個人資金の流れを知る)
日本銀行の資金循環統計(2017年第2四半期・速報)によると、2017年6月末の個人金融資産は1831兆6564億円(前年比+4.4%)となっています。個人の保有する株式や投資信託の価格が上昇したことが背景にあります。
個人金融資産の51.6%を占める現金・預金は前年比+4.4%の945兆円と過去最高を更新しています。現金・預金の内訳をみると、定期預金(=定期性預金)が最も多く452兆円(『現金・預金』全体に占める割合は47.8%)、次に普通預金(=流動性預金)の404兆円(同42.7%)、現金の83兆(同8.8%)、外貨預金の6兆円(同0.7%)、譲渡性預金の296億円(0.003%)と続きます。
株式(上場株式・非上場株式・その他持分)は前年比+22.5%の191兆円、株式のうち上場株式については前年比+23.8%の103兆円(4期連続の純流入)、投資信託は前年比+15.6%の100兆円(4期連続の純流入)と株高を受けて大幅に増加しています。
債務証券のうち、国債は前年比-0.29%の12兆円、地方債は前年比-22.46%の6709億円、事業債(社債)は前年比-6.4%の6兆5084億円となっています。
個人の資金フローをみるとマイナス金利政策下での、利回りを求めて事業債に資金が流入していましたが、新発債の発行利回りもマイナス金利の影響を受けており純流出に転じています。
◆個人の金融資産(資金循環統計)
- 金融資産計 1832兆円(100%)
- 現金・預金 945兆円(51.6%)
- 債務証券(国債・地方債・事業債など) 24兆円(1.3%)
- 投資信託 100兆円(5.5%)
- 株式等 191兆円(10.4%)
- 保険・年金・定型保証 520兆円(28.4%)
- その他 52兆円(2.8%)
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■Keyword:
資金循環統計 :日本銀行が四半期毎に公表している国内金融機関、法人、家計などの金融資産・負債の残高や増減などを預金や貸出といった金融商品ごとに記録した統計データのこと
譲渡性預金:必要が生じた際には、満期日前であっても譲渡できる事業者向け預金商品(個人事業主など)。販売対象は個人および法人。高利回りなのが特徴で、まとまった資金の短期間の運用に有利な預金。預入方法は一括預入で預入単位は1,000万円単位、預入期間は1週間以上2年以内
金融経済情勢と金融政策運営(日本銀行)
(出所)https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2020/data/ko200205a1.pdf
世界経済の成長率は2018 年の半ば頃から鈍化しており、IMF(国際通貨基金)の最新の見通しによると 2019 年の成長率は 10 年ぶりに小幅ながら3%を下回ったものとみられます。
今回の世界経済の成長鈍化のきっかけは、米中貿易問題を巡る不確実性の高まりや、スマートフォン向け等の需要鈍化を受けたITサイクルの調整などから、グローバルに製造業の活動が急減速したことでした。
不確実性の高まりは設備投資の先送りにもつながり、IT関連財や資本財を中心に世界的に貿易が大幅に減速しています。もっとも、このように製造業部門でやや大きめな調整がみられた一方で、世界的に非製造業部門は堅調に推移しました。こうした製造業と非製造業との対比は「デカップリング」現象と呼ばれています。
この世界的なデカップリングの背景には、そもそも多くの国で雇用・所得環境が良好であったことに加え、各国が景気減速リスクの高まりに対応して金融・財政政策によるマクロ経済対策を強化したことがあります。
この結果、緩和的な金融環境や引き締まった労働需給、堅調な消費者マインドなどが維持され、製造業が減速するもとでも、各国の内需が支えられました。もっとも、デカップリングが永続する保証はありません。製造業の減速が長期化すれば、その影響が次第に非製造業や家計に波及することも考えられます。
逆に、内需が持ちこたえているうちに製造業の調整に目処が付けば、世界経済は成長経路に復していくことが期待できます。この点、日本銀行としては、後者の、世界経済が次第に持ち直していくシナリオが実現する可能性が高いとみています。
ここでは、その根拠を2つ指摘しておきます。
1点目は、米中間の通商交渉や英国のEU離脱問題など、グローバルな不確実性の根底にあった問題に一定の進捗がみられることです。後ほど申し上げますように世界経済を巡る不確実性は依然として大きいと判断していますが、これらを受けて不透明感が多少とも薄らいでいけば、企業の行動を前向きなものに転換させると考えられます。
2点目は、グローバルな製造業の調整が進捗し、業況感も改善していることです。とくにIT分野では、世界的に在庫調整が進み、半導体出荷額も持ち直しています。先行きも、データセンターや5G通信関連などでの需要増加が見込まれており、生産活動を押し上げていくと期待されます。
こうした見方は国際機関とも共通したものです。例えば、IMFの世界経済見通しでも、世界経済の成長率見通しは、2019 年の 2.9%から、2020 年は3.3%まで高まる姿となっています。
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