AIエージェント時代、転職市場で最も希少になる人材とは 海外企業の事例から読み解く3つの条件

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CAREER STRATEGY 2026

AIエージェントが「働く同僚」になった今、転職市場でいちばん手に入りにくい人材とは

世界の先進企業の動きから、ハイクラス転職で選ばれ続ける人の条件を読み解きます。

「AIに仕事を奪われるのでは」。そんな不安の声を聞く一方で、海外の先進企業ではまったく別の現象が起きています。AIを使いこなす人材の奪い合いが、かつてないほど激しくなっているのです。

特に注目したいのが「AIエージェント」の広がりです。AIエージェントとは、ひと言でいえば指示を受けて、自分で手順を考え、ツールを使いながら仕事を最後までやり切るAIのこと。質問に答えるだけのチャットAIから一歩進み、メールの下書き、データの集計、問い合わせ対応などを「任せられる」存在になりつつあります。

では、AIが同僚として働く時代に、企業が高い年収を払ってでも欲しがるのはどんな人なのでしょうか。この記事では、海外の具体的な事例と複数の調査をもとに、その答えを3つのポイントに整理してお伝えします。読み終えるころには、次の一手がはっきり見えているはずです。

まず知っておきたい、世界で起きている3つの変化

世界経済フォーラム(WEF)が2025年1月に公表した「仕事の未来レポート2025」では、2030年までに約1億7000万件の仕事が新たに生まれ、約9200万件が失われると予測されています。差し引きでは仕事は増えるものの、働く人に求められるスキルの約4割が5年のうちに入れ替わるという見立てです。

また、コンサルティング大手PwCの「AI仕事バロメーター2025」では、AIスキルを求める職種は、そうでない同種の職種に比べて平均56%高い賃金が提示されていると報告されました。AIを扱える人の価値が、すでに給与に表れはじめているのです。

  • 11つ目の変化:定型の作業はAIエージェントへ急速に移っている
  • 22つ目の変化:採用の前に「AIでできないか」を問う企業が増えている
  • 33つ目の変化:AIを使いこなせる人の給与水準が上がっている

つまり、単純に「AIに詳しい人」が希少なのではありません。AIと一緒に成果を出す仕組みをつくれる人こそが、これからの転職市場で最も手に入りにくい存在になっていきます。ここからは、その中身を具体的に見ていきましょう。

ポイント1:AIエージェントを「指揮」できる人

1つ目の希少人材は、AIエージェントを部下やチームのように動かし、仕事の流れそのものを設計できる人です。専門的には「オーケストレーション」と呼ばれます。オーケストラの指揮者のように、複数のAIと人の役割を割り振り、全体として良い結果を出すようにまとめ上げる力のことです。

海外事例:「人を増やす前にAIで試す」Shopify

カナダのEコマース大手Shopifyでは、2025年4月にCEOのトビ・リュトケ氏が社内向けのメッセージを公開し、話題になりました。その内容は、AIを使いこなすことを全社員の基本的な期待とし、新しく人を採用したいときは、まずAIではその仕事ができない理由を示すことを求めるものでした。

この方針が意味するのは、「作業をする人」よりも「AIを含めた仕事の組み立てを考えられる人」が重視されるということです。評価の軸が、手を動かす量から、仕組みを設計する力へと移っているのです。

Shopify(カナダ)

採用ページ:https://www.shopify.com/careers

指揮できる人が持っている力
  • ✓仕事を細かい工程に分けて「AIに任せる部分」と「人がやる部分」を見極められる
  • ✓AIへの指示を、目的・条件・ゴールがはっきりした形で伝えられる
  • ✓成果を数字で測り、うまくいかない工程を改善し続けられる

これは、従来のマネジメント力の延長線上にある力です。部下を育て、チームを動かしてきた経験は、AI時代にむしろ価値が上がると考えてよいでしょう。

ポイント2:最後の判断と責任を引き受けられる人

2つ目の希少人材は、AIが出した答えをうのみにせず、最終的な判断を下し、その結果に責任を持てる人です。AIは驚くほど速く答えを出しますが、ときにもっともらしい間違いをすることがあります。これは「ハルシネーション(AIが事実と違う内容をあたかも本当のように答えてしまう現象)」と呼ばれます。

海外事例:AI化を進めて、人の価値を再発見したKlarna

スウェーデンの決済サービス企業Klarnaは、2024年にAIアシスタントが顧客対応チャットの約3分の2を担い、およそ700人分の仕事に相当すると発表して世界の注目を集めました。

ところが2025年になると、同社のCEOは顧客対応の質を重視する姿勢を示し、人のスタッフによる対応を再び強化する方針を打ち出しました。効率だけを追い求めると、顧客の信頼という大切なものが失われかねないことに気づいたのです。

この事例が教えてくれるのは、AIがどれだけ進化しても「ここは人が判断すべきだ」と見極め、品質と信頼を守る人が欠かせないということです。

Klarna(スウェーデン)

採用ページ:https://www.klarna.com/careers/

海外事例:AIエージェントを売る側のSalesforce

米国のSalesforceは、企業向けAIエージェント「Agentforce」を主力に据えています。CEOのマーク・ベニオフ氏は、社内の仕事の一定割合をすでにAIが担っていると語り、2025年にはサポート部門の人員体制を大きく見直しました。

一方で同社は、AIを顧客の現場に導入し、成果につなげる役割の人材には引き続き力を入れています。AIの導入が進むほど、その結果に責任を持ち、顧客と信頼関係を築ける人の出番が増えるという構図です。

Salesforce(米国)

採用ページ:https://careers.salesforce.com/

ポイント3:専門分野とAIをつなぐ「通訳」になれる人

3つ目の希少人材は、自分の専門分野の知識とAIの力を掛け合わせ、両者の橋渡しができる人です。たとえば、財務に詳しくてAIで分析を自動化できる人、医療の現場を知っていてAIの導入を進められる人などがこれにあたります。

AIの技術者は世界中にいます。現場の専門家もたくさんいます。しかし、その両方の言葉を話せる人は驚くほど少ないのです。だからこそ、この「通訳」ができる人の価値は高まり続けます。

海外事例:社内AIを全社に広げたMcKinsey

世界的なコンサルティング会社McKinseyは、社内向けの生成AIツール「Lilli」を開発し、過去の膨大な知見をすぐに引き出せる仕組みを整えました。同社によれば、社員の大多数が日常的にこのツールを使っているといいます。

ここで重要なのは、AIが資料をまとめてくれるからこそ、コンサルタントには業界の深い理解をもとに、AIの答えを顧客にとって意味のある提案に仕上げる力が一層求められるようになったことです。

McKinsey & Company(米国)

採用ページ:https://www.mckinsey.com/careers

海外事例:AIをつくる会社でも専門家が求められるAnthropic

AIを開発する企業自身も、技術者だけを集めているわけではありません。米国のAnthropicの採用ページを見ると、研究やエンジニアリングだけでなく、政策、法務、営業、顧客支援など、幅広い専門分野の職種が並んでいます。AIを社会に届けるには、それぞれの分野の専門家が欠かせないからです。

Anthropic(米国)

採用ページ:https://www.anthropic.com/careers

これまでの人材とこれからの希少人材の違い

ここまでの内容を、表で整理してみましょう。

比べる点 これまで評価された人 これから希少になる人
仕事の進め方 自分で速く正確に作業する AIと人の役割を設計し、全体を動かす
判断の仕方 経験と勘で決める AIの答えを検証し、責任を持って決める
専門性 1つの分野を深く極める 専門分野とAIをつなげて成果にする
評価される成果 こなした仕事の量 仕組みが生み出した価値の大きさ
希少人材になるために、今日からできる4つのステップ

「自分にもできるだろうか」と感じた方も、心配はいりません。大切なのは、小さく始めて積み重ねることです。

  1. 1
    自分の仕事を分解してみる
    1週間の業務を書き出し、AIに任せられそうな作業に印をつけます。これだけで「指揮する側」の視点が身につきます。
  2. 2
    1つの業務をAIで改善し、数字で記録する
    「資料作成の時間が半分になった」など、具体的な数字で成果を残しましょう。転職の面接で最も説得力のある材料になります。
  3. 3
    AIの答えを必ず確かめる習慣をつける
    出典を確認し、違和感があれば立ち止まる。この習慣が「判断と責任を担える人」への近道です。
  4. 4
    経歴書に「AI×専門分野」の実績を書く
    ツール名を並べるのではなく、自分の専門分野でAIを使ってどんな価値を生んだかを語れるようにしておきましょう。

面接で響く伝え方

「AIを使えます」ではなく「AIを使って、この課題をこう解決し、これだけ成果が出ました」と語る。

評価されにくい伝え方

使ったことのあるAIツールの名前を並べるだけ。成果とのつながりが見えないと印象に残りません。

まとめ:AIの時代こそ、人の価値が問われる
  • ▶1つ目:AIエージェントを指揮し、仕事の流れを設計できる人
  • ▶2つ目:AIの答えを検証し、最後の判断と責任を引き受けられる人
  • ▶3つ目:専門分野とAIをつなぐ「通訳」になれる人

AIエージェントの広がりは、キャリアを脅かすものではありません。自分の経験をAIの力で何倍にも広げられる、大きなチャンスです。

世界の先進企業が求めているのは、AIに負けない人ではなく、AIと組んで新しい価値を生み出せる人です。今日の小さな一歩が、数年後のハイクラス転職を大きく引き寄せます。ぜひ、ワクワクしながら次のキャリアを描いてみてください。

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