退職しても『現役』のまま。海外の元役員が選ぶ、顧問・アドバイザリーという新しい働き方

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退職しても「現役」のまま。海外の元役員が選ぶ、顧問・アドバイザリーという新しい働き方

週に数日、月に数時間。経験そのものが価値になる働き方が、アメリカやイギリスで当たり前になりつつあります。ハイクラス転職を考えるいまこそ知っておきたい、その仕組みと準備の方法をまとめました。

「役員まで上りつめたら、そのあとはどうなるのだろう」。ハイクラス転職を目指している方なら、一度はこんなことを考えたことがあるのではないでしょうか。

日本では、退職後の選択肢というと「再雇用」か「完全引退」の2つで考えられがちです。ところが海外に目を向けると、まったく違う景色が広がっています。

元役員が、複数の会社に少しずつ関わり、経験を切り売りするのではなく「経験を貸し出す」。そんな働き方がひとつの職業として定着しつつあるのです。

この記事では、海外の最新データと実際の企業の仕組みをもとに、顧問・アドバイザリーという働き方を分かりやすく紹介します。読み終えるころには、いまの転職活動の見え方も少し変わっているはずです。

海外で広がる「フラクショナル」という働き方

まず知っておきたいのが、フラクショナル・エグゼクティブという言葉です。フラクショナルは「一部分の」という意味で、1つの会社にフルタイムで勤めるのではなく、週に数日や月に数日だけ役員として関わる人を指します。たとえば、財務の責任者(CFO)を正社員で雇う余裕のない中堅企業が、経験豊富な元CFOに週2日だけ来てもらう、といった形です。

イギリスの人材会社の解説でも、正社員の役員を置く代わりに、パートタイムやプロジェクト単位で経験豊かなリーダーを迎える企業が増えていると紹介されています。

数字で見る、海外のいま

海外の複数の業界レポートを見比べると、この流れが一時的なブームではないことが分かります。

項目 内容 出典の種類
アメリカ企業の利用状況 約35%の企業がすでにフラクショナルな役員を1人以上迎えており、2026年末には40%に届く見込み 専門人材サービス会社の分析
中堅企業の今後 2027年までに、中堅企業の3割以上が少なくとも1人のフラクショナル役員と契約するとの予測 調査会社ガートナーの予測(複数の記事で引用)
担い手の変化 独立して働く暫定・パートタイム役員の多くが1年以上その働き方を続けており、仕事として定着しつつある 大手人材紹介会社の調査(業界ブログで紹介)
需要の伸び フラクショナル人材を探す企業が直近1年で大きく増加 専門人材サービス会社の集計

数字は各社の推計や予測を含みます。地域や企業規模によって差があるため、方向性をつかむ目安としてご覧ください。

ある人材サービス会社は、この働き方を「その場しのぎの穴埋めではなく、経験者があえて選ぶキャリアの設計」だと説明しています。つまり、仕方なく選ぶ道ではなく、自分の意思で選ぶ前向きな道として見られているのです。

元役員が活躍する3つのスタイル

ひとくちに「顧問・アドバイザリー」といっても、関わり方はさまざまです。海外で代表的なスタイルを3つに分けて見てみましょう。

1つ目 実務に入る「フラクショナル役員」

週数日だけ役員として社内に入り、戦略づくりから実行まで責任を持つスタイルです。

2つ目 話を聞かせる「エキスパート」

投資会社やコンサル会社の質問に、電話やオンラインで1時間ほど答えるスタイルです。

3つ目 外から支える「社外取締役」

取締役会の一員として、経営を外の目線でチェックし助言するスタイルです。

1つ目:実務に入るフラクショナル役員

いちばん「現役感」が強いのがこのスタイルです。ここで、アメリカの具体例を見てみましょう。

Chief Outsiders(チーフ・アウトサイダーズ)/アメリカ

採用ページ:https://www.chiefoutsiders.com/become-an-outsider

マーケティングや営業のトップ(CMOやCSO)を、中堅企業にパートタイムで送り出している会社です。同社の採用ページによると、所属するメンバーは大手事業会社で部長級(VP)以上を経験した人たちで、コンサル会社や広告代理店ではなく事業の現場を率いた経験が重視されています。案件は自分で進めつつ、経理などの裏方仕事は会社が引き受けてくれる仕組みです。公式サイトでは、70を超える業界から120人以上の役員経験者が在籍していると紹介されています。

ポイントは、ただ助言するだけでなく、社内のチームに入り込み、結果に責任を持つことです。同社は、外から提案するだけの一般的なコンサルとの違いをはっきり打ち出しています。

2つ目:経験を話すエキスパート

次は、もっと気軽に始められるスタイルです。エキスパートネットワークという言葉を聞いたことはありますか。これは「業界に詳しい人」と「その知識を知りたい投資会社やコンサル会社」をつなぐサービスのことです。

GLG(ジー・エル・ジー)/アメリカ

登録ページ:https://glginsights.com/executive-experts/

1998年に創業し、この業界を切り開いた会社として知られています。登録者には元役員や技術の専門家、研究者などが含まれます。同社のページには、石油・ガス業界の元役員が環境対策の影響についてクライアントに助言した例や、全国チェーンの元幹部が企業買収の場面で業界の専門家として関わった例が紹介されています。1対1の通話、アンケート、少人数の助言会など、関わり方を選べるのも特徴です。

Guidepoint(ガイドポイント)/アメリカ

登録ページ:https://www.guidepoint.com/experts/

ニューヨークに本社を置くエキスパートネットワークです。同社の説明では、届いた依頼を見て、受けるかどうかは自分で決められ、自分の予定に合わせて参加できるとしています。なお、依頼は時間との勝負で、最初の連絡から72時間以内に面談が終わることも多いため、すぐに返事をすることが大切だと案内されています。

気になる報酬ですが、海外のレビューサイトによると、部長級以上の経験者なら1時間あたり数百ドル、大企業のCクラス(社長や役員クラス)なら1,000ドルを超えることもあるとされています。ただし、これは案件や専門性によって大きく変わる目安で、会社が公式に保証している金額ではない点に注意してください。

3つ目:外から支える社外取締役

イギリスでは、複数の社外取締役(NED:ノン・エグゼクティブ・ディレクター)を掛け持ちする働き方が、ポートフォリオ・キャリアと呼ばれています。ポートフォリオとは「組み合わせ」のこと。1つの仕事にすべてを預けるのではなく、いくつかの役割を組み合わせてキャリアをつくる考え方です。

英国の資産運用会社の解説によると、社外取締役の関わり方は会社の規模によって違うものの、一般的には月に2〜3日ほどとされています。日々の経営のプレッシャーから一歩離れながら、経営の現場に関わり続けられるのが魅力です。

一方で、最初の1社を見つけるのが一番難しいともいわれます。英国の取締役専門の人材サービスによると、取締役の席の約9割は人づての紹介で決まるとされています。だからこそ、現役のうちから人脈を育てておくことが欠かせません。

いまから準備できる、顧問キャリアへの道のり

ここまで読んで「自分にはまだ早い」と感じた方もいるかもしれません。でも実は、海外の専門家の多くが「現役のうちから準備を始めること」をすすめています。ハイクラス転職は、その準備にぴったりのタイミングなのです。

  1. 1
    自分の「とがった強み」を言葉にする
    英国の人材紹介会社は、取締役会は何でもできる人ではなく、足りない能力を埋める人を探していると助言しています。財務、デジタル、事業再生など、自分が一番語れる分野を決めておきましょう。
  2. 2
    転職先で「部長級以上の実績」を積む
    Chief Outsidersのように、現場を率いた経験を重視する会社は少なくありません。次の転職では、肩書きだけでなく、数字で語れる成果が残せるポジションを選ぶことが将来の武器になります。
  3. 3
    小さく試してみる
    海外のキャリア解説では、本業を続けながら1件だけ助言の仕事を受けて、手応えを確かめる方法が紹介されています。ただし、いまの勤め先の副業ルールや競業避止(同じ業界で働くことを制限する約束)は必ず確認してください。
  4. 4
    発信と人脈づくりを続ける
    社外取締役の多くが紹介で決まる以上、「自分がこういう役割に関心がある」と周りに伝えておくことが大切です。LinkedInでの発信や業界イベントへの参加も効果があるとされています。
知っておきたい注意点
  • !収入が安定するまで時間がかかる 海外の解説では、独立直後は顧客が集まるまで3〜6か月ほど収入が落ち込むこともあると紹介されています。
  • !福利厚生は自分で用意する 保険や年金、休暇などは会社が面倒を見てくれないため、手取りの比べ方に注意が必要です。
  • !社外取締役にも責任がある 英国では、社外取締役も社内の取締役と同じ法的な責任を負うとされています。引き受ける前に、会社の状況をよく確かめましょう。
  • !秘密情報の扱いは慎重に エキスパートとして話すときは、前の職場の機密を話さないことが大前提です。各社とも厳しいルールを設けています。
まとめ:キャリアの「その先」まで見すえて転職を
  • ▶海外では、週数日だけ役員として関わるフラクショナルな働き方が、ひとつの職業として広がっています。
  • ▶関わり方は「実務に入る」「話を聞かせる」「外から支える」の3つが代表的で、組み合わせることもできます。
  • ▶求められるのは、現場を率いた実績と、はっきり言葉にできる強みです。
  • ▶準備は現役のうちから。次の転職は、その土台をつくる絶好のチャンスです。

役員になることはゴールではなく、次のキャリアへの入り口かもしれません。いま選ぶ転職先が、10年後、20年後の「現役であり続ける自分」をつくります。ぜひ、年収や肩書きだけでなく「どんな経験が積めるか」という目線でも、次の一歩を選んでみてください。

本記事は、各社の公式サイトや海外の業界レポート・解説記事(2024〜2026年公開)をもとに作成しています。報酬や統計は推計を含み、今後変わる可能性があります。応募条件などの最新情報は各社のページでご確認ください。